胴掛の人物名、百年間違ってた祇園祭・保昌山、説明変更へ

7/13(京都新聞.com)

 

祇園祭前祭(さきまつり)の保昌(ほうしょう)山(京都市下京区東洞院通松原上ル)が所有する胴掛2点の名称や説明が長年誤っていたことが12日までに分かった。画題となっている2人の伝説的な人物を取り違えていた。胴掛は江戸時代の絵師円山応挙が下絵を手がけた名品で、今夏の会所飾りでは約1世紀ぶりに説明を変更する。

 

保昌山の胴掛は中国由来の人物「張騫(ちょうけん)」「巨霊人(きょれいじん)」と神秘的な動物「虎」「鳳凰(ほうおう)」を主題としている。裏地には、1773年を示す「安永二年六月」の年号と、応挙を意味する「円山主水」の墨書があることで知られる。

 

これまで保昌山保存会では2点の胴掛の名称をそれぞれ「虎に張騫」と「鳳凰に巨霊人」としていた。だが、2010年、胴掛を指定文化財とする際の市の調査で、1875(明治8)年の京都府庁文書や、91(同24)年の国の文書には「鳳凰に張騫」「虎に巨霊人」などとする記述があることが判明。100年前後にわたって人物を取り違え、言い伝えが誤っていたことが分かった。

 

しかし、このときは正しい理解が住民には広まらず、誤解は解けなかった。今年、東京の出版社が発行した祇園祭に関する本を住民が見た際、胴掛の説明が従来の内容と異なることに気づいた。この住民が市文化財保護課に問い合わせ、取り違えていたことが認識された。

 

このため保昌山は、同課に正しい案内文の作成を依頼。13日午後の会所飾りが名称を「張騫鳳凰図」「巨霊人虎図」と説明を変更する。保存会の岩田修理事(68)は「先人たちから聞いていたのと全く逆で当初は素直に受け止められなかった。今後正しい理解が浸透するのをゆっくり待ちたい」と話す。

 

# 分かりやすく説明すると虎に巨霊人(きょれいじん)鳳凰に張騫(ちょうけん)であることです。張騫は中国前漢代の政治家、外交官。紀元前119年に烏孫への使者として赴いた。巨霊人は中国神話の黄河の河神。陝西省の太華山と少華山は昔ひとつで、この部分で黄河は曲がっていたが、巨霊が山を二つに分け、黄河がまっすぐに流れるようにしたという。小人(しょうじん)で中国に伝わる伝説上の小種である。靖人(せいじん)短人(たんじん)鶴国(かくこく)とも称され、東方の海にある島に住んでいるとされる。「三才図会」より。